太宰府そぞろ歩き
2009-12-10 18:57:42
カテゴリー kimono
都を偲ぶ菅原道真を慕って梅の木が飛んできたという「飛梅」で有名な
太宰府天満宮は福岡空港からタクシーで30分程。
久留米に所用で出向く折には、必ずまほろばの大宰府政庁エリアをそぞろ歩く。
太宰府天満宮も美しいが、お気に入りはその上、宝満山の登山口にある竈門神社。
源氏物語でもその紅葉の美しさが歌われたというが、どの季節も清廉な空気が
気持ちを掃き清めてくれる様だ。最初の階段を登るとそこには平家の里から来たという
かわいい鹿が3頭。瞳の愛らしさが、その神社の手に収まるような佇まいと良く似合う。
今回の目的の一つは久留米絣との出会い。
きものは本当に「出会い」といってよいほどに、タイミングが意味をなすように思う。
しかし、久留米の有名百貨店でも反物はおいておらず、あるのはみな久留米絣を洋服に
仕立てたもの。太宰府天満宮の参道には重要無形文化財の久留米絣を扱う店がある。
そこでも反物の数は限られている。機械織りならば着尺で3万円程度。
縦糸だけ手織り、藍染めなど手を加える段階により価格も変わる。
深い藍色に、すみきった水色の大きめの輪が織られた品が目を惹きつける。
価格は13万円程。しかし、どれほど手間がけられていても素材は綿であるゆえ
大島紬のように訪問着へ格上げというわけにはいかない。
綿糸をあらそう(麻の一種)というかつては八女産(現在は大分産)の植物の表皮により
手でくびく。そして、いくつもの藍瓶につけて色を染め分ける。
その工程はお店の方もまだ十分把握できなほど大変で複雑なものだという。
【写真】上があらそうの表皮、下はくびかれた綿糸
重要無形文化財保持者による品は60万円は下らないので、現代では贅沢な品。
反物はあきらめ、洋服にもきものにも羽織れるという久留米絣のジャッケット?!
を清水の舞台から飛び降りたつもりで購入。
本来、綿素材は「ふだんkimono」では本当に手頃に楽しめるものなのだが
需要と供給の関係で、価格は芸術作品のように高くなり次第に市場から姿を消えてしまうのかもしれない。そんな現実を目の当たりにし、一人でも多くの人に日常にkimonoを纏う
楽しみを伝えたいと一層思いを強くした午後だった。