太宰府そぞろ歩き2
2009-12-13 19:49:45
カテゴリー ソリテュード(積極的孤独)
思いがけずに時間が空いた。
そんな時、直感にしたがい行動ができるのは「おひとりさま」の醍醐味の一つ。
そこで再び、太宰府に戻り参道から少し外れた脇道をそぞろ歩く。
九州国立博物館へ向かう途中、細い川の真ん中に玉垣で囲まれた場所がある。
由来をみると謡曲「藍染川」の舞台となった場所だと記されている。
かつて京女梅つぼは天満宮の神官だった中務頼澄(なかつかさよりずみ)を慕い筑後に下ったが頼澄にはあえず、その悲しみに耐えきれず身を投げた。
それを知った頼澄は天神様に祈ったところ梅つぼは生き返ったという。
玉垣は蘇生の碑。その逸話を知ると「藍染川」の響きは「愛染川」につながる。
その先には光明寺という禅寺があり、ひなびた佇まいに惹かれて中に入る。
門をくぐり、すぐ左手に白い玉砂利が敷かれた小さな石庭があった。
そこ落ちるもみじの赤とのコントラストは美しく、自然と人工の調和に心やすらぐ。
そのまま200円を払い本堂に上がる。そこから見る苔庭も今は紅葉におおわれ
岩についた苔の緑とおちついた風合いをみせ、いくら見ていても見飽きることがない。
平日で雨がしっとり降るその日、幸い他には人はいない。シャッター音も人声もない。
私は、このような時ほど「ひとりで居る」ことの幸福感をしみじみと思うことはない。
「わぁ、素敵」、「ほっとする〜」、「みて、あそこの石の形」、「いつ頃建ったのかしら」
こんな会話が、友といれば交わされる。それは楽しい時空間の共有である。
しかし、本当に美しいもの、心に響く空間を感じたとき、一旦それを沈潜させなければ
本当に味わうことはできないのだ。
現象に接し、粗い意識での感想を言葉にすれば、その貴重な感動はそれだけで
完結してしまう気がする。
感動をソリテュード・タイムという揺りかごの中で、しばらく眠らせた後、その気持は
思いもよらない形をもち、私たちの人生をいっそう豊かにしてくれるのだ。