鼻緒をすげかえ、ドレスダウンの技
2010-03-31 13:41:53
カテゴリー kimono
銀座の散歩途中に立ち寄るお気に入りのお店のひとつが明治創業草履のやまと屋さん
(日産ショールームからコアビルに向かう途中左側)
細長いそのお店の中には「履き倒れの江戸」といわれた頃を彷彿とさせる
凜とした佇まいの品々がある。
サイズも、色もそこにある既存品から別オーダーでき(同じ価格のことが多い)
購入後のメンテナンスも無料できめ細やかにおこなってくれる。
以前、ご紹介した「赤白」を巻き込んだ熟練の技の品を「白黒」でお願いしようと
立ち寄る。
すると「いやぁ、職人さんはご注文頂いた品を退院後つくり、また体調を崩し
結局亡くなられて…あの複雑な巻きを作れる技術の方はまだ育っていなくて」
「…そうですか。とても残念です」と言葉を失う。
「では、こちらの舟形がユニークな細身の草履を」「その方もお亡くなりになって」
技の繫ぐことのむずかしさをここでも実感。
というのも、浅草で購入する塗りの蛇の目や日傘が、最近壊れやすい。尋ねてみると
「採算がとれないので海外で技術指導の上、製造しているのだが、実はもうひとつ…」という。
そんなことを思い出しているうちに、「今、あるうちに買っておかねばと」急かさせるかのように前から気になっていた鈍い金色の草履をみせてもらう。
【写真1】巾約5mmの巻きが10段で高さ約6cm。この職人さんの草履は品があり歩きやすい
「礼装にぴったり」と勧められるが、365日のふだんきもの生活者には第一礼装の場よりも
日常にいかに活用できるかが大切だが、その控え目な美しさには抗えず頂くことにする。
そしてふと、思いついて「鼻緒が同じ素材のままですと礼装に過ぎるので、もうワントーン、
ドレスダウンしたいのですが」というとすぐに理解してもらい、もう少しシルバーがかった金色を出してもらう。
【写真2】結局、こちらの鼻緒にすげかえてもらうことに。実物は台とのコントラストが絶妙。
20分ほど待った後に、すげ替えた品は柔らかものの着物をきた折には、しっとりと品よくおさまりそうな風情。洋服もそうであるが、きものも仕上がりの足元のバランスは重要。
【写真3】前つぼも、いつもの赤ではなく鼻緒ど同色で格高。
今度のお茶会には、色無地に桜の帯を締め、この草履をはいていこう。
全体を俯瞰して完成させるきものの色の世界は心を澄ますほどに、その奥行きが広がりスリリング♪