掘り出し日和
2009-06-07 17:28:55
カテゴリー kimono
梅雨入り前の、束の間の晴天はこころが晴れ晴れとなる。
6月10日掲載分の日経ビジネスオンライン原稿執筆をおえた。
自転車をこぎ、肌に触れる風を五感で楽しむ。
こんな瞬間、生きている喜びに溢れる。
金曜日から、様々な場所でまつり神輿にであう。
そんな風景も、心弾ませる。
とおりすがりのフリー・マーケットに目をやると
反物がとびこんできた。
ココア色の地に小さな菊がモティーフの幾何学模様。
地味な色ながら、なんとなく恥ずかしげな風情がかわいらしい。
「おいくらですか」と尋ねると、小柄な女性が
「あのぅ…1000円なんですけれど700円でいかがですか」と。
骨董市に足しげく通う私の底値を下回っている。
「いただきます」
「ありがとうございます。母にウールのきものを仕立ててあげようと
買ったのですが、もう着られなくなってしまって…今は着物を着る人も
少ないですものね。」
「私、365日着ていますから。ちゃんと仕立てますね」
そんな会話も、なんとはなしに暖かく感じるのはお天気のせいだけだろうか。
そこにはきもの好きの人にただよう「絆」のようなものがあると思う。
呉服屋さんの話をうかがっても気にいって仕入れた反物が
「どこにお嫁入りするのか」気になるという。
そんな深い思い入れをさせる何かがきものにはあるのだ。
というわけで、私には地味な反物ながら、
またひとつ将来の楽しみが増えた昼下がりだった。