眼福の花形歌舞伎
2009-11-23 12:17:32
カテゴリー kimono
この秋、新橋演舞場の花形歌舞伎(25日迄)が美しい。
昼の部は、四世鶴屋南北の通し狂言『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ』と
『弥生の花浅草祭』。
”花形”というだけあり染五郎、菊之助、亀治郎など若手人気役者が初役を務める
というのもみどころ。
ところで、「きもので歌舞伎」というときもの初心者ならずとも敷居が高い
と同時にあこがれの場と感じるようである。
そんな考えも思い切って「えい、やっ!」と着てみると意外になんということも無いのである。
そして「やはり、着てきてよかった」とのワクワク度は洋服の比ではない。
秋冬はきもの姿の女性も多いので、よい勉強になる。
それでも「なんだか不安」という方には、歌舞伎座の幕間席をぜひ勧めたい。
一幕だけ、予約不要で1000円前後でみられるのは、経済的かつ合理的。
そこには、大向こうから声をかける歌舞伎通の方々と、
美術の勉強かスケッチブック片手に海外からの学生姿や観光客など
それぞれが自由に場を共有している雰囲気がよい。
そして歌舞伎の様式美や、時を経て受け継がれ洗練された色使いの
鮮やかさは真上からみえてこそ、その真髄に触れられる気がする。
4F席まで急な階段を上り下りするのはきものを日常にとり入れているという
達成感もある。
歌舞伎座が取り壊されたら、そんな体験もよい思い出になるはず。
きものを纏う醍醐味は、新橋演舞場にお誘い頂き「何を着ていこうかしら」
という迷いや戸惑いからもすでに楽しみが始まるというところにある。
季節感や役者や出しものへの敬意や連れ立って歩く友人とのコーデも大切。
そこで選んだのが濃い紫のしぼりの小紋。葡萄の葉模様はボジョレーの季節にピッタリ。
帯揚げは濃い目のピンクのしぼり。
帯は京都で織ってもらったお気にいり。
地紋のところどころに刺した白や金銀刺繍が遠目に浮き上がる。
名古屋帯ではあるが、裏には五本指の龍と「かずみ」と名前が織られている。
これでは、すこし落ち着きすぎなのでめのうに真珠で縁取りをした帯留をあしらう。
期せずして帯以外はすべて40年ほど前に母が愛用していた品となった。
仕上げは、ピンクの羽織。
【写真】きょうの装い
友人は肌映り抜群のベージュ地の紬に繊細な線模様の訪問着。
八掛と同色のさび朱の帯が控え目な色気と品を漂わす。
歌舞伎の後は、銀座の草履やさんまでまでそぞろ歩く。
すっと背筋が整い伸びやかで大らかな気持ちになる、きもの日和だった。