2010年2月5日掲載
先週まで2回にわたりご紹介してきた Hawaiian Humane Society。
今回はそこでボランティアとしてもグルーミング体験をしてきたTさんのハワイ便りです。
ホノルルにあるグルーミング・ショップで仕事をし、日本とハワイとのトリミングの違いやオーナーの意識の差に驚いたプロの日々には興味深いものがあります。
グルーミングとは犬の健康状態を知る格好の場。
ですから「私の美容院よりも犬のほうが足しげくトリミングにいくのよ」というのも、擬人化、愛情過多ではないのです。
このコラムがコンパニオン・アニマルとの絆を別の視点で考える参考になればと願っています。
今年でトリミング暦10年になるトリマーです。
この10年間で何百頭もの犬のトリミングをさせていただきました。
ありがたいことにこれだけ鍛えられると、どんな犬も、オーナーさんにもほとんど驚くことはなくなる半面、周りから受ける刺激も少なくなってきていました。
そんな中、海外研修(結果的に指導)でハワイに行くチャンスが舞い込んだのです。
30歳にして初の海外滞在など、不安に押しつぶされそうになりながらも生活を始めることになりました。
ハワイについて2日目から、早速ショップでのトリミング開始。
国によって人気の犬種も違うようです。
例えば日本でトリミングに多くくる犬種といえばプードル・チワワ・パピヨン・シーズーなどでしょうか。
それがハワイでは・・・
ラサ・アプソ(シーズーに似ていますが性格が少しきつい)、シルキーテリア(ヨークシャーテリアを大きく筋肉質にした感じ)、ビション・フリーゼ(プードルに似、顔を大きく丸くカットする犬種)、マルチーズ、これらの犬種の多いこと。
カットの仕方も日本とは全く違い、暑さのせいかデザインのほとんどが丸刈りの為、顔以外あまり鋏を使わないのです。ハワイでは丁寧さよりも時間短縮の方が重要らしく、体に止まらず足先までバリカンを入れてしまうカットが普通でした。
カットも『えっ!?それで終わり???』と思うような仕上がりでオーナーさんにお返しをするという日本ではありえないことが、ハワイでは当たり前の様に起こっているのです。
そうそう、使っている鋏の種類も違います。
ハワイのショップスタッフが使っていたのは、カットする面積の約9.5割が本鋏、残り0.5割の部分ですき鋏。
どこでもかしこでも本鋏でカットするので早い早い!!
ただ、面は綺麗に揃ってはいません。しかし、遠くから見ると何故だかとても綺麗。線(ライン)だけは綺麗に作られているからのようです。
日本人(特に私)が使っているのは、カットする面積の約5割から6割が本鋏、本鋏と同じくらいの割合ですき鋏も使用しています。
面が揃っているのは当たり前、近くで見ても綺麗です。
遠くから見ても特に問題はありませんが、すき鋏でぼかしている為、線(ライン)がぼやけているからか、ビシッと揃っているようには見えないかもしれません。
お客さまにも違いがあることに気づきました。
日本でのお客さまはカットへの希望をしっかりもっていらっしゃる方が多く(意識が高い)、中には雑誌や写真持参のお客様もいます。流行にも敏感で、教わることもしばしば。
しかし、ハワイのお客様のほとんどがあまりカットのことを知らず、日本でやっているようなカットをしてみると『こんなカットができるの!?』と驚かれることばかり。
アメリカ人に比べ日本人はとても丁寧で繊細なカットをします。
その為、ハワイでは日本人のトリマーはとても重宝されチップも頂きました。
しかし、正直なところ日本にいた時の半分の力で、十分に喜んでもらえる状況でしたので複雑な気持ちにもなりました。日本人は手先が器用なのでしょうね。
一方、アメリカ人の発想力は素晴らしく、トリミングの大会などでは日本人には思いもよらないようなデザインを作り出すことができるのです(これは人間の美容師の世界でも同じことが言えるそうです)。
スピード重視、面より線(ライン)、発想力豊かなアメリカ人、丁寧さ重視、線(ライン)より面、手先の器用な日本人、この両方を兼ね備えたトリマーになれたらきっと凄い!
犬と飼い主の絆を育む橋渡しをするトリマー、そして技術はアメリカと日本のよいとこどりをする!
そんな決意を胸にわくわくと日本に帰国してきた2010年です。