2010年10月15日掲載
太田 匡彦 著
朝日新聞出版
衝撃的なこの問いかけは9月に出版された本のタイトルである。
執筆者は『AERA』記者の太田匡彦氏。
記者として取材をし、各自治体の調査結果もとりいれられた
客観性のある内容であるが、その根底にある視線のやさしさは
著者自身もコンパニオン・アニマルのオーナーであること、そして
両親ともに獣医師免許をもっている環境で育ったゆえではないかと感じた。
日本ではどれだけ安易に子犬が保健所に運び込まれか殺されているのか。
想像はしていても、「なぜ、どうやって、誰が、どれだけ」関わり悲惨な
現実がおきているかということは、中々知られていないのではないだろうか。
2008年度に各自治体に引き取られた11万5797匹のうち殺処分されたのは
8万4045匹。
そんな現状の根底には、繁殖者→子犬せり市→ペットショップ→顧客という
流通システムがあるということが具体的に記されている。
そのシステムの裏には幼い子犬ほど顧客がつくという需要があること。
他先進諸国では8週間は親兄弟から離さないという規則が
できているが、日本の場合6週間ほどでセリにかけられる。
体の弱い子犬は、すぐに売れなければ「ゴミ」同様の扱いで捨てられたり
「処分品」として保健所にもちこまれることになるという。
ブリーダーとは名ばかりの悪徳繁殖者やネット販売業者、移動販売業者など
法整備が及ばないところで、命を商品として扱う現状はつらくとも目をそむけては
いけないと考える。
このような現状は「家族同然にかわいがっているので私には人ごと」
ともいいきれない。
というのも知人のコンパニオン・ドッグ・トレーナーによると
「社会化が十分できていない日本の犬は、欧米式のしつけを取り入れても
中々問題行動が直らないことがあるが、それは犬たちの環境の違いを
考慮せずにおこなっているから」という意見もある。
また遺伝的な病気が多くなれば、「家族への医療費」もかさむのである。
もちろん、1月22日の本コラムでもふれたように福岡市のように保健所に
もちこまれた犬をその飼い主としっかり向き合い協力して殺処分が
今ではほとんどないという取り組みも進んでいる。
読書の秋、現実に少し目をむけてみませんか。