雑誌『月刊とらばーゆ』2008年1月号 掲載
「年齢に負けない私になる」という『月刊とらばーゆ』のアンチエイジング特集。取材依頼を受けた時、わたしの中では「365日のきものライフ」と「ソリテュード・ライフ」がしなやかな自分を保つ柱であるので伝えたいと思った。
しかし、昨今のアンチ・エイジング(抗加齢)という言葉の氾濫には少し違和感を覚える。
「わたしから、シワをとらないでください。苦労してやっと手にいれたのですから」と語ったのは、海外の女優/歌手だったか…勲章とはいわないまでも、顔にでる深味は経験の賜物。それを年齢だけでひと括りにされることには違和感を覚える。「anti」ではなく「with」agingという心意気はもっていたいものである。
しかし、きものは、90歳になっても20歳と勝負(笑)できるツールであることは否めない。
なぜならば、その人の内面の輝きをふわりとだす「着るもの」だから。きもの初心者にそんな体験をしてもらうことが私の役割かもしれないと考えている。
冒頭の「20代30歳より、今が楽しい」といえるのは、「おひとり様」の向こう側にあるソリテュード・ライフを実践しているからこその実感。
小紋の袷(あわせ):なす紺に白の染めが鮮やか。黄色地のかがり名古屋帯は真夏以外は締められる重宝な品。手にする反物は泥大島紬の逸品。
20代30代より、今が楽です。
20代は猪突猛進。業種や職種の違う多様な仕事をわくわくと経験してきました。未知のことに次々チャレンジするのが、私の好奇心を満たしてくれたからです。ところが、経営コンサルティングに関わっていた30代半ばのこと。社内のパワーゲームに巻き込まれ、理不尽な解雇を宣告されたのです。あまりに不本意なことが続き、身も心も壊れてしまいました。
つらく寂しい中で、自分を見つめ直し、発見したのがソリテュード・パワー(積極的孤独力)。その研究で「ひとりの時間の効用」を実感し2001年には米国の修士課程を修了。
本来誰もが持つ「一人でいられる能力」を活性化することは自分らしさを呼び覚まし、たおやかに生きる秘訣。「ひとりの時間」が人間を成熟させ、独自の考え方や価値観を創り出すからです。まだ言葉にならない思いを発酵させると、今までよりきめ細やかに人と付き合え、無理せず相手を好きになれます。
陽の当たるところに吸い寄せられ、白鳥のように水面では優雅に見えるけれど、必至で足ひれを動かしていたのが、私の20代30代。ソリテュード・パワーを活用以来、水面は激しく波立っていたとしても、深いところでは静かな海のように、動じない自分を手に入れました。
その後、経営コンサルタントから、Kimono Life Styleコンサルタントに転身。着物に見向きもしなかった人が、袖を通した途端、自身の内面の輝きを外にまであふれさせます。そのお手伝いが、何より楽しくて、天から与えられたCalling(使命)だと直感的にわかったからです。
ソリテュード・タイムを活用すると、生き方や物事を俯瞰的に捉える余裕が身に付きます。不必要なストレスにも囲まれないので、5年後10年後の自分がもっと楽しみになるのです。
by @kazumiryu