きものを纏ったとき、男女ともに和装と洋装による身体の動きの違いを実感されていることでしょう。
ただ残念ながら滅多に着ないきものでの感想はこんな事が多いようです。
「帯がきつくて体が動かしづらい」、「食事ができない」、「鼻緒が痛い」、「草履が脱げる」
ところが、その部分こそがほんの少しの改良や練習により大きなメリットへと変化するポイントなのです。
365日、一日一回はきものを纏うという生活を長年続ける私にとって、和装とは「背筋がのびた、腰痛がなくなった」、「真冬も暖か。特に腰まわり」、「抱きしめられて居るような安心感」、「ウエストをきつくしめないので食欲倍増?!」等々その恩恵を日々受けています。
それを科学的に示したのが、NHKの「アインシュタインの眼〜和装とカラダの深い関わり」という番組(2012年2月25日放映)。特に和装と身体の関係はKazumi流のレッスンで常日頃お伝えしていることでもあり「ほらね!」とその科学的証明に納得。
帯が筋肉の代りとなり腹筋と背筋をサポートすることにより背骨のカーブがわずかに緩くなる。
洋服(生地の総厚さ3.5cm)と和服(2.7cm)を着て、それぞれの10時間後の違いをみると、最初の値を「1」とした場合以下の結果。
洋服 | 和服 | |
---|---|---|
胸の部分 | 0.8 | 1.2 |
腹 | 1.1 | 1.7 |
脚 | 0.7 | 1.9 |
靴の歩幅は和装の約4倍(着地順序はかかと→つま先)。
草履では着地はつま先からとなり、そこから蹴りだす形となり鼻緒の部分とすねに力がはいる。
歩き方には決定的な違いがあり、そこを理解せずに草履や雪駄で歩こうとするので脱げてしまったりするのです。
2010年英科学誌ネイチャーにはハーバード大学の人類学者がケニアと米国人ランナーの走り方を生体工学の視点から分析し、こんな成果も発表しています。「日常的に裸足で走っている人は、靴を履いてかかとから着地するよりも、脚にかかる衝撃が少ない」その論文により裸足ランニングが注目を浴びるきっかけになったといいます。
現代日本人のDNAには、かつてそのような事を直感的、身体的に知り何百年も前から実践していたDNAが眠っているのです。
きものでもつらい思い出も、ちょっとした着方のコツにより他では類をみないメリットを享受することができます。
次回はそんな楽々きもののコツをお話しいたしましょう。