寒さピークの季節こそ、きものの出番。
雪景色にはさす塗りの蛇の目に、塗り下駄は纏う人を一服の絵の中の主人公にしてくれます。
さて、寒さ対策についてはKazumi流ゆきんこフードをはじめ
前回のコラムでいくつかご紹介しました。
そしてもうひとつ。
この季節ならではのワンランク上の美きものの楽しみ方をご紹介します。
それが「伊達えり」。
一番上と左から三番目の松葉柄の伊達えりはきものの端切れから自分で作った品。
朱色はどのきものも品よく、引き締めてくれます。下から二番目のサーモンオレンジが下の写真で使用したもの
伊達えりときくと、みなさんは格式ばった席で使うもの、あるいは成人式で使ったなどという記憶が蘇るかもしれません。
『やさしいきもの用語小辞典』(世界文化社)には「伊達衿」という項目にはこのような説明があります。
「半衿と長着の間に重ねる別衿。重ね衿ともいう。半襟とほぼ同じ大きさで、縦2つに折り、“わ”のほうが5mmほど見えるように着付ける。もとは、礼装の二枚がさね、三枚がさねのようにみせるため簡略化したものだった、今では比翼仕立てになっていない振袖や訪問着、色無地などに重ねて重厚感を出すとともに、彩りを添えるために用いられる」
この説明は明確です。
ところがもう一つの意味があるのです。それは江戸時代、人々は寒くなると何枚もきものを重ねて纏っていました。
寒さを、そのように出来ない人は貧相で見栄えが悪いということにも繋がったようです。
その名残で、現代では冬のきものは上記の説明以外に、小紋であっても伊達衿(重ね衿)をつけることにより暖かみが表現できるというわけです。
実際に、普段何気なく着ている小紋も半えりの色ももちろんですが、この5mm程度のえりがちらりと見えるだけで、ぐっと印象がしまります。
何より、さりげない華やかさというのが、日本人の美意識にも合っていると思います。
淡い薄ピンクの半えりに、サーモンオレンジの伊達えり
そしてクリームベージュに花柄の小紋。
その上には能衣装殻の長コートにストールです。
オフホワイトに青海波の刺繍入り半襟に左と同じ伊達えり
淡いパープルグレイに蘭の刺繍がはいった訪問着
格式ばらずに、1月、2月の美きもの姿に伊達えりを身近なものとして気軽に楽しんでみてくださいね。