東京品川区にある品川女子学院での熱い6月が終わった
それは、ほんの三回で浴衣に触れたこともない生徒達へゆかたの着付けを教えるという
チャレンジングなレッスンの日々。
一回の授業は50分、正味40分程度が三回である。
おとなでも大変な課題を、毎年14歳の少女たちは弾ける笑顔とともに易々と超えていくのである。
そんな208名+留学生のエネルギーは汗まみれの私に心地よいわくわくを与えてくれた。
一回目はゆかたを纏う、二回目は半幅帯で一文字結び。
そして三回目はすべてを纏った上で所作やポージングまでを勉強する。
三回目はデジタルカメラ持参が許されているので彼女たちの意気込みが違う。
ヘアスタイルをアップにしたり、かわいらしい飾りをつけたり。それまでは学校貸与の浴衣を使っていた生徒も、このときはMyYukata持参も。畳む手つきも、我が品ともなれば熱の入り方が違う。
一回目の授業では、和傘の日傘と蛇の目傘の説明をした。傘を広げたとたん「わぁーっ」というどよめきとも、ため息ともつかぬ音に囲まれる。その赤に魅せられたのか「先生、三回目の写真撮影の時には貸してください」と、すでに予約をする生徒もおり頼もしい。
授業に先立って講演をした折の一人ひとりの感想を読むと、それぞれに何かが琴線に響いてようでうれしい。そして、実際に身につけてみるとゆかたの魅力に気づかされたようである。
PTAのお一人が「浴衣をだしていたら、私の浴衣を娘が畳んでくれました。これも授業で習ったおかげとうれしくなりました」とメールをくださった。
知識というものにはいくつか種類があるが、その一つに日常生活で実践できるというものがある。今回の授業はまさにそれであり、学校での知識が家庭に持ち帰られ、花咲いた例であろう。
生徒たちから楽しさが伝わったのか、今月末にはご両親への特別レッスンも依頼されており、昨年をこえる40名近くの参加がきまっている。
今年は、「お父様も参加」ということにしたが、先のご家族もお父様が参加ときいている。
家族それぞれが助け合いながら、浴衣をきて花火を見にでかける夏。そんな風景にかかわれることは、私にとって最大のご褒美である。
昨日、Kazumi流の生徒さんが4回目のレッスンに、自宅からきものを纏ってやってきました。30歳代のその方は、それまで和装には触れたこともないようなタイプです。ご指導を終え色々と写真を撮影していると、彼女は興奮の面持ちでこう言いました。
「先生、先月までわたし自分できものを着るなんて想像もしていませんでした。人生って何がおこるかわからないですね」と。
14歳の彼女たちの心には、何が芽生えただろうか?
その何かが大人になったある日、ふと気づくと何がおこるかわからないほどに大きく根をはやしているということを願っている。