花冷えの4月4日(日)、パステル・グリーンの一つ紋の色無地に桜の帯をしめ、都心から一時間ほどの大磯まで足を伸ばした。
「みなさん、着物で参加する自由なお茶会なの」と声をかけて下さったのは銀座吉水の中川誼美女将。場所は神奈川県立大磯城山公園内にある茶室「城山庵」。ここは三井家国宝の草庵式茶室としておかれていた国宝「如庵」を模して平成2年に建てられたものであり、庭も美しい。「少し前の日本を体験しよう」というコンセプトで様々な活動展開している中川女将の発案で「日本髪を自分の髪で結ってみよう」というユニークな集まり。
佐賀と長崎から、現代では数少ない高度な髪結いの技術をもった杠(ゆずりは)さんとその後を継いでいる息子の杠達郎さんが上京。杠さんはたおやかに着物を纏った美しい方「かつては髪を切るといったら、夫を亡くしたなどそれはもう命がけのことでした。最近では日本髪を結う方もほとんどいないのですが、美しい長い髪の方をみかけると、“あー、この人が日本髪を結ったらどれほど美しいか”と考えると、胸のこのあたりがわさわさしまして…でも、きょうはそんな機会を頂き…」という言葉には、きものを日常に普及させたいと願う私の考えに通じるところがあり、強くうなづく。
20代の新日本髪に結った女性は「義理の母からもらった」という赤い麻の葉柄の小紋、いつもはフラダンスを指導するという方の「一度、島田を結ってみたかった」と幸せそうな笑み。
「母がアンティーク着物が好きで」という方は親子でアンティーク着物。彼女のかわいらしい髷と明治時代の大ぶり袖が何とも素敵。さらに帰りはその姿のまま、気負わずにバンを運転するというナチュラルな所作は「ふだんきもの」派の鏡。
男性のきもの姿はやはり、年齢を問わず品格がぐっと上がる。
そんな中、圧巻は文金高島田に結われた花嫁姿。昔は白無垢ではなく黒い大振袖。「これも親戚が捨てるといっていたのを貰って来たのよ」と笑いながら語る中川氏。裾模様の染めも素晴らしく、この姿をみれば花嫁になりたくなるほど。
しかし、どなたも日本髪が実に自然であり、個性にあった型であることが素人目にもわかる。
昼食は吉水特製の体に優しく健康、安心の食材を平山蒸し(低温蒸)で調整した食事をかつてはお膳を使わなかったということで畳に直接置いて頂く。食後の抹茶も畑の近在で農薬を使わないオーガニック。のど越しが柔らかい。和菓子は「手毬」の見て美しく食べておいしい創作和菓子の依頼をうけ持参。
ふだんきもの生活者としては前下がりボブが手間がかからず、和装洋装を問わないので最適なのだが、「いつか文金高島田に花嫁衣装を着てみたいな」と思ってしまうのはやはり日本人のDNAなのだろうか。