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心に余白をもつ時間

Dialogue “time to have a room to breathe”

対談
津田恵子 きものライフスタイル コンサルタント
漆 紫穂子 品川女子学院校長

『女の子が幸せになる授業』漆 紫穂子 (著) 小学館 掲載

【監修こぼれ話】

『女の子が幸せになる授業』漆 紫穂子 (著) 小学館 表紙

2010年11月22日待望の『女の子が幸せになる授業』が小学館
より出版されました。

この本は、それぞれ一流のプロ達が次へと繋がることのみを心から願ってその神髄を惜しげもなく、生徒たちへ披露しているが魅力です。

礼法、茶道、華道、着付け、特別講師それぞれがそのような思いになったのも漆紫穂子校長の卒業生の10年後を見据えた「28歳で輝く女性になる」という理念があればこそ。
卒業後のその時、ボーダーレス空間で公私ともにたくましく美しく生きる人としての「根っこ」のようなものを「和を知ること」を通して植えていこうという考えは、海外で仕事をしてきた私にとっても、体験から必要性を実感しました。

その考えを目下人気、実力共に急上昇の品川女子学院の14歳(中学2年生)を対象に
具現化しているのは、とてもユニーク。
礼法、茶道、華道、そしてKazumi流ゆかたの着付けは「内面を輝きを表現する授業」として
位置づけてここ数年受け持たせて頂いています。

漆校長との対談では、特別授業への校長の理念、きものを通して感じてほしいことなど
Kazumi流主宰津田恵子の想いも合わせて凝縮されています。
40頁におよぶ責任監修の内容は分かりやすいイラストによりすぐに役立つものばかり。
もちろん他章もこれまで気づかなかった情報満載。生徒たちの本音も興味深いですよ。
実用書としももちろんですが、様々な立場の方が色々な視点で楽しめる内容でお勧め。

漆 紫穂子(品川女子学院校長)×津田恵子(きものライフスタイル コンサルタント)

着物との出合い

 「世界に目を向ける前に、日本の文化に目を向けてほしい。特に、民族衣裳である着物(授業では浴衣)に、生徒をふれさせてあげたい」

 そう考えていたとき、ある着付けの専門家をご紹介いただきました。美容業界の重鎮として活躍されていた方で、当時八十代。お目にかかったところ、なんと偶然、本校の卒業生で、創立者も知っているとのこと。深いご縁を感じました。

 私自身は、それまで着物とはなじみのない生活を送ってきましたが、生徒に学ばせるからには、まず自分が体験せねばと、その方に、個人的に教えを請いました。私が新しいことを始めるときは、そういうパターンが多いようです(笑)。その際、お誘いしたのが知人の津田さんです。外資系企業などで、経営コンサルタントをしてきたビジネス・パーソンです。

津田 今でこそ、三六五日着物を着て生活していますが、私も、それまで着物とは縁がありませんでした。着物に対するイメージは「難しそう」「動きにくそう」「お金もかかりそう」。だから、最初はお断りしたのです。

 ただ、海外と日本を往復するなか、「外国の人は、日本がどういう国なのか知りたがっているのに、自分たちは、日本のことを知らないな」と思うことは多々ありました。校長先生も常々言われていますが、日本のことを知らずに世界でものを語れない、という思いを強く感じていました。

 そんなこともあり、習いに行くことを決めたのですが、そこが人生の転機に。すっかりはまってしまいました。着物をまとったときや、帯をきつく締めたときの感覚が、背筋が伸びるというのでしょうか、それまでには感じたことがないものだったのです。それがうれしくて、うれしくて。そのままの格好のまま帰り、道すがら写真を撮ってもらったりもしました(笑)。

 その後、驚くような勢いで勉強されましたよね。師匠のお手伝いをするようになり、数年後には、ついに授業も引き継いでいただくことになりました。

津田 コンサルタントの性で、一つ学ぶと集中し、凝りだしてしまうのです。まったく着られなかった自分が、これだけ楽しめるようになったのだから、それを伝えたいと。

 それと、着物での生活をするなかで、もっとカジュアルに着こなす方法があってもいいのではと感じていたのです。というのも、高そうな着物をお召しの方はいらしても、普段着として着こなしている方が意外と少ない。けれど、今の私がそうですが、慣れるとむしろ洋服よりも過ごしやすいのです。車の運転も、犬の散歩もまったく問題ないですし、スニーカーより速く走ることもできます。そのような経験も含め、着物の魅力を伝えたいと強く思っています。

着付けを通じて伝えたいこと

 私自身、着付けを習いながら、すぐにでも生徒に伝えなくては、と思ったことがいくつもありました。一つは、着物はエコであるということです。

津田 そう。親から子へ、子から孫へと代々譲り受けられ、大切にされるものという事実に加え、昔の人は、着なくなった着物を、布団や座布団に仕立て直していました。余った布はお手玉や袋などに。それが傷むと、おむつや、雑巾や、ハタキにしたりして、最終的には土にかえるまで使っていました。究極のリサイクル、地球に優しい服なのです。

 それと「思いやりの心」です。暑い盛りの浴衣の着付けの授業で、その八十代の講師の先生が、「夏は何を着ても暑いもの。着物は自分のことよりも周りの目に涼しくみえることが大切」
とおっしゃっていたことがとても印象的でした。
授業は六月なので、津田さんも、着物では暑いでしょうが、私は、津田さんの姿を見たときにいつも涼しい気持ちにさせてもらえます。これも、相手に対する思いやりの表れなのだと思います。

津田 ありがとうございます。本当のことを言えば、中学二年の生徒さんを相手に、いつも汗だくなのです(笑)。それはさておき、思いやりの心や、相手に敬意を表す気持ちというのは、一種のイマジネーションの力ですが、それは心に余白がないと生まれません。私は、着付けは、心に余白を持ついい機会だと思っています。

 というのも、ジーンズにTシャツなら三十秒で着替えられますが、着物や浴衣となると、そうはいきません。慣れている私でも、鏡の前で十分は過ごします。それは自分だけの時間。手こそ忙しく動かしていますが、心は無の状態です。そこにはデニムを一瞬で着るときとは違う、余白の空気が流れています。そして、その時間に、疲れていた自分や、置き忘れていた何かがゆっくり整えられてくるのを感じるのです。

授業の工夫の仕方

 興味や関心の薄い生徒は不思議なことに一人もいません。

津田 最初こそ、興味なさそうにしていた生徒も、ちょっと手をかけて浴衣をまとわせて、帯をギュッとしめると、ぱっと明るい顔になります。

 見ているときと、まとっているときとでは、感覚がまったく違うのでしょうね。

津田 ふわりと包まれて、ほっとする気持ち。赤ん坊のとき、おくるみにくるまれたときの安心感。安堵感と同じような心地よさを思い起こさせる、といったら言い過ぎでしょうか。そういう意味でも、浴衣を「着る」というよりも、「まとう」という表現のほうが、私は感覚的にしっくりきます。

 洋服は、まず形があって、そこに自分が入る感じがしますが、着物は、自分の身体に形をあわせていくようなところがありますものね。

津田 女の子は、「美しい」とか「かわいい」という言葉にとても敏感です。ですから、所作を教えるにしても「こうすると美人に見える」というと、心を開いてくれます。そのうえで、美しく見えるのは、そこに他人に対する配慮があるからなのだ、ということもあわせて伝えるようにしています。

 蛇の目傘を開いてみせたとき、あるクラスでどよめきがおこったことがりました。美しさに感激したのでしょう。で、すかさず「傘をさすときは、全開にせず、小さめにさすことも、他人に対する気遣いですね」という話をします。すると、とてもよく伝わるのです。

 子どもたちにものを伝えていくとき、言葉だけではなかな腑に落ちないけれど、実際に目にして、触れていくことで、心に落ちていくものなのですね。

家庭や子どもたちへのメッセージ

津田 着物を身近に感じてほしいというのが何よりです。ひょっとしたら、「私には関係のない世界」と思っていた子もいるかもしれません。けれど、この授業を経験することで、少なくとも、そんな思いは取り除けたと思います。

 これは、私見なのですが、着物の文化って、戦後に生まれ育った私達世代で途切れている部分があるような気がしてこわいのです。というのは、戦前の日本は、着物が身近なものでしたよね。その点で、当時の方は、着物について教わるというよりは、自然に接して育った世代なのでしょう。しかし、戦中消失した着物も多く、戦後、着物文化が廃れ、日常的に着物を目にする機会は減りました。私もそうですが、今の生徒の親御さん世代は、大人でも着物についてはあまりなじみがない。そこに子どもたちに伝えるべき文化の断絶を感じてしまいます。

 だから、上の世代から語り継いでもらい、若い人たちへとバトンタッチをしないと、着物の文化が途絶えてしまうと思うのです。

津田 授業では、「これは、おばあちゃんが縫ってくれたんです」と言ってくるなど、自分の浴衣を持ってくる生徒も年々増えています。

 生徒からは、授業をきっかけに、おばあ様の浴衣が押入れの奥から出てきたとか、浴衣を着た自分の写真をおばあ様に送ったところ、とても喜んでくれた、という話も聞きました。こうして、忘れられていた着物文化が再びつながっていくのは素敵なことだと思います。


by @kazumiryu

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